産業用ロボットによる自動化はなぜ失敗するのか
目次
1. なぜロボットによる自動化が失敗に至るのか
2. ロボットによる自動化を失敗しない為には
3. ロボット導入のよくある失敗事例とは
4. まとめ
1. なぜロボットによる自動化が失敗に至るのか
近年、日本全体で労働人口が減少しており、それは製造業でも例にもれず問題で、
経済産業省の「 ものづくり人材の確保と育成 」によれば製造業の就業者数はこの18年間で157万人減少しております。
実際に各企業もこれを体感しており、中小企業における製造業の従業員数過不足DIは2021年の第1四半期は-3.7%となっております。
※従業員数過不足DIとは・・・今期の従業員数が「過剰」と答えた企業の割合(%)から、「不足」と答えた企業の割合(%)を引いたもの
このことから今後は自動化が必須になるといわれており、実際にほとんどの製造業にて導入が進んでおります。
そしてそのほとんどは狙い通りの効果が得られ、満足されていますが、
急な人手不足の波により慌てて導入してしまった自動化に不慣れな企業様等の一部で想定通りの効果が得られないという失敗が増加しております。
これがなぜ発生してしまうのか。
理由は様々ありますが、大きな要因の一つとして「 事前検証の甘さ・不確かさ 」によるものだといえます。
産業用ロボットは人に代わって様々な作業を行うことができる優秀で万能な機械だと認識されている方も少なくありませんが、
実は 産業用ロボットは万能ではなく、様々な制限の中で周辺機器に助けられながら作業する機械 です。
その制限とは「 動作範囲・動作速度・周辺設備への干渉・可搬重量・動作時のモーメント 」等が挙げられ、
これらを考慮するとセット治具やコンベア、各種アプリケーション等の複数の周辺機器を活用しなければ、
自動化システムとして成り立たないことがほとんどです。
その為、産業用ロボットを活用した自動化システム(以下ロボットシステム)は、複合的な要素が交じり合う複雑な設備なのですが、
「 ロボットの動作範囲が問題ないから大丈夫 」と安易に自動化を進めてしまうと失敗に繋がってしまうのです。
このような事態を避ける為には、ロボット単体だけでなく周辺機器も含めた事前検証が必須条件となります。
ただロボットシステムはオーダーメイド品となりますので実機での事前検証のハードルが高く、
一般的に3Dシミュレーションソフト上で行うことがほとんどとなります。
最後にまとめますと、
ロボットによる自動化が失敗に至る要因
事前検証が甘く、動作範囲・動作速度・周辺設備への干渉・可搬重量・動作時のモーメント等が考慮されていない
ロボットによる自動化を失敗しない為には
3Dシミュレーションソフトを活用したシステム全体の事前検証を行うこと
となります。
※3Dシミュレーションソフトを活用した搬送システムの事前検証例
2. ロボットによる自動化を失敗しない為には
ロボットによる自動化の失敗についてばかりお話してきましたので、
ロボットを活用した自動化にネガティブなイメージを持たれ、「 やっぱり導入には慎重にならなければ 」と思われた方も多いと思います。
確かにロボットによる自動化は時間も費用も多く投資する必要がありますので、慎重に進めるべき内容です。
ただポイントさえ押さえれば不必要に慎重になる必要はなく、むしろ積極的に進めていくべきであることは間違いありませんので、
ここではロボットによる自動化を失敗で終わらせない為に必ず押さえておくべきポイントをお伝えしていきます。
失敗しないロボットシステム導入のポイント
1.導入の目的を明確にする
ロボットシステムを導入する際にまず重要なポイントが 何を目的として自動化を行いたいのかを明確にすること です。
「 生産スピードを上げたい 」「 人の作業負荷を減らしたい 」「 人での作業を自動化したい 」「 作業者を危険作業から解放したい 」といった
様々な導入目的がある中で、何を重要視するのかによってシステムの構成は大きく異なってきます。
例えば生産スピードを上げたいのであれば、ロボットの高速性を最大限生かすために周辺機器も備えなければなりませんし、
人の作業負荷を減らしたいといった目的であれば、人とロボットとの協働作業になることが多いため、通常より高い安全性が必要になります。
このように導入目的によってロボットシステムは大きく形を変えますので、
導入目的を明確にし、どのようなロボットシステムを必要としているのかを明確にすることが重要となります。
2.自動化する工程(作業内容)を正しく選択する
ロボットシステムを導入する際、「 せっかく導入するならあの作業もこの作業もロボットでやらせたい 」と思われるのではないでしょうか。
確かに数多くの作業工程を自動化することはできないわけではありませんが、それに応じたコストが必要となってきます。
ロボットシステムの費用は一般的に1000万円からといわれておりますが、どのような作業の自動化が下限の1000万なのかと言いますと
決まった位置にあるワークをとって加工機に投入し、排出して完成品箱に整列するといった簡単な作業等が当てはまります。
このように作業工程としては「 取り出し・投入・排出・整列 」といった少ないものであってもまとまった額の投資が必要となります。
当然この他の作業工程も併せて自動化させたい場合は追加で投資が必要となりますし、
さらに自動化する作業工程が多ければ多いほどシステムの構成は複雑化し、取り扱いには相応の知識が必要となってきます。
そこで、本当に自動化したい・しなければならない作業工程とはどの作業になるのか細かく分類することで、
コスト面・取扱い面においてスリム化された本当に導入するべきロボットシステムが見えてきます。
3.3Dシミュレーションソフトでの事前検証を十分に行う
上述の通り、ロボットシステムを導入する際に必ず行うべきは事前検証です。
シミュレーションにて事前に ロボットの動作時間、周辺設備への干渉がないか、設置スペースは想定通りか などを検証し
満足いく内容かどうかを確認しなければなりません。
特にロボットの動作姿勢が思ったように取れるのかは入念に確認しておくことが重要です。
但し、シミュレーション上でのロボットの動作時間(タクトタイム)はあくまでも参考値となることを理解しておく必要があります。
3. ロボット導入の失敗事例
ここではロボット導入における失敗事例でも特に多い「 ロボットを導入したのに想定していたほど生産効率が上がっていかない 」
についてお話していきます。
その発生要因としては
「 起動ボタンを1回押せば、しばらく目を離せるはずだったのに予想よりチョコ停が多く、結局目を離せない 」や
「 導入後、想定していたタクトタイムに間に合わないことがわかって、生産時間が伸びてしまい人の残業時間も増加した 」
といったことが挙げられます。
せっかく多くの時間と費用をかけた自動化がこのような失敗に終わってしまうと以下のような負のスパイラルに入ってしまうことに繋がります。
1.生産効率が上がらない為、設備費用が思ったように償却できず、社内は自動化に否定的になる
2.もうロボットによる自動化はこりごりなので、人での生産に頼る方式に戻す
3.労働人口減少がさらに加速し、人手不足が悪化する
4.人がいないが生産を守らなければならない為、少ない人材での対応となり残業時間が増加する
5.残業時間が増える等、職場環境が悪化することで退職者が増加し、さらに人手不足が加速する
このような事態を招かないようにする為には、
上述の【 なぜ自動化が失敗に至るのか 】 【 どうすれば成功に導くことができるか 】を十分に理解しておくことが
重要であるといえます。
4. まとめ
ロボットシステムの活用は労働人口の減少が続いていくことからも、これからの製造業において必須条件と言っても過言ではありません。
しかし実際にロボットシステムの導入は進んでいるものの「 導入したはいいけど思ったように生産できなくて倉庫で眠っている 」という
ユーザー様もいらっしゃるのが現状です。
せっかく多くの時間と費用を投資して、導入したシステムがそうならない為にも、上述の事例やポイントを参考にしていただければ幸いです。
特にロボットシステム導入においては事前検証は必須だと捉えていただき、
もしシステム製作を外注する場合には3Dシミュレーションソフトを活用して事前検証を行ってもらえるのかという点も
依頼する際の確認ポイントにして頂きたいと思います。
産業用ロボットを取り扱って40年以上の弊社 松栄テクノサービスでは、3Dシミュレーションソフトを活用した事前検証のみも行っております。
「 なじみの設備屋に依頼したいけどシミュレーションでの検証だけはやれない 」
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まずは無料相談だけでも承りますので、お気軽にお問合せ下さい。
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